ストレッチは美容や健康にとても効果的です。このストレッチは用途に合わせて、ストレッチ方法を変えたり持続時間や回数を間違えると逆効果にもなります。ストレッチの基礎から、細かい原理までお伝えします。
ストレッチの効果
なぜストレッチをするのか?目的は人それぞれだと思います。何を目標にして行うにしても、ストレッチで起こる身体の変化の為では有りませんか?ストレッチで起こる身体の変化と2次的に起こる変化は以下の通りです。
1次変化
筋肉の緊張が取れる
様々な原因で筋肉は緊張して硬くなります。筋トーヌスと言い、無意識に力が入っている度合いが強まると筋肉は硬くなります。ストレッチをする事で、筋肉をリラックスさせる効果があります。その日の内に身体が軟らかくなった場合は、この筋トーヌスの沈静の結果と言えます。
・筋肉の緊張を取る場合は【動的ストレッチ】が効果的です。
筋肉の長さが伸びる
筋肉は収縮位(縮んでいる状態)が続くと、その長さに適用しようとします。ムダに大きい筋肉ですと燃費が悪いので、細くしたり短くする機能がある為です。筋肉を使わなかったら、この筋肉の短縮が見られます。1度縮んでしまうと、【筋膜リリース効果を上げる筋膜連鎖7ライン】で全身に影響を与えます。
ストレッチでは、新たに「この長さまで必要だよ」と教える事ができます。
・筋肉の長さを伸ばすには【静的ストレッチ】が効果的です。
2次変化
関節可動域が広がる
筋肉の長さが原因で関節が硬かった場合は、かなり可動域が広がり易いです。関節可動域が狭まる原因として他に、靭帯・関節包・皮膚の器質的な変化があります。この3つもストレッチをするとある程度回復します。
姿勢改善
筋肉の緊張のバランスの崩れから、姿勢の悪化や骨盤の開き・脊柱の不正列が起こります。姿勢が悪くなって2.3ヶ月未満なら、ストレッチをする事で姿勢が正しくなります。それ以上前から続いている場合でも、周辺の組織を改善すれば時間はかかりますが姿勢は良くなります。
2.3カ月未満なら【動的ストレッチ】
2.3ヶ月以上なら【静的ストレッチ】
リラックス
筋肉を緊張させる原因の1つに自律神経失調症があります。交感神経が強いと筋トーヌスが強まり、筋肉が硬くなってしまうからです。逆も言える事で、筋肉が興奮状態ですと自律神経も興奮状態になります。筋肉を緩める事で、交感神経優位な状態から脱却できます。特に首は副交感神経に関与し易いので、首のストレッチをするとリラックスできて寝付き易くなります。
リラックスさせるのは唯一【静的ストレッチ】だけが向いています。
・首の後ろ側のストレッチ【後頭部の痛み 緊張型頭痛の解消法 (頚部伸筋)】
血流改善
筋肉の周りや筋肉の中には血管が通っています。筋肉が緊張すると大きくなります。力こぶを作るのと同じ原理です。筋肉が太くなりますと隣を走っていた血管を圧迫してしまいます。血を止められる事になりますので、そこから先の血流が悪くなります。
足先だけの冷え性・左右どちらかだけの手の冷え性・足のムクミの場合は疑った方が良いです。
筋肉ポンプの作用もありますので【動的ストレッチ】がむいています。
ストレッチのメカニズム
筋肉の緊張=筋トーヌスや、筋肉の収縮の回路を説明します。
筋肉が収縮するには
α運動ニューロンと言う神経から「収縮しろ」と指示が飛びます。この指示の時間的・空間的違いがあるだけなのです。50%の細胞に指示を出したら、50%の力を出せる。10秒間連続して指示を出したら、10秒間力を出せる。こういうメカニズムになっています。
筋トーヌスとは
筋トーヌスは無意識に力を入れる事です。すぐに動ける様に準備する意味や、姿勢を維持する為に筋トーヌスは多かれ少なかれあります。この筋トーヌスが強まる事が、筋肉が緊張している状態(こってる・張ってる)なのです。
筋肉を緩めるには
α運動ニューロンからの刺激が0なら、全く力が入りません。神経が切れたら動かせ無いのはこの為です。もちろん神経を切るのではなく、α運動ニューロンの働きを減らせば良いのです。ココで重要なのが、筋肉の状態を確認するセンサー筋紡錘・腱紡錘(ゴルジ腱器官)です。
筋紡錘とは
筋内繊維と言いまして、筋肉の中に入っています。筋肉が動く時に連動して動きます。その結果、「今この筋肉はこの長さだ」と把握して脳に教えてくれます。筋肉を動かさないと、情報がズレて収縮しているのに「収縮した方が良い」と脳に伝えてしまいます。その結果が筋肉がつると言う現象です。筋肉が長くなりすぎると「脱臼しちゃうから、力入れよう」と指示します。
腱紡錘(ゴルジ腱器官)とは
腱と筋肉の間付近にあります。筋紡錘とは違い「腱を筋肉がどんなけ引っ張っているか」を脳に教えます。筋肉に引っ張られると「脱臼は諦めるとして、肉離れしない様に力を抜く様に」と指示します。
筋肉の長くするには
新しい細胞を作り、より長い筋肉に代える必要があります。筋細胞を伸ばすのではなく、筋細胞の数を増やす事になります。筋肉の細胞が入れ替わるのが2.3ヶ月で約80%です。よく身体改善をうたうお店で2ヶ月を1クールにしている理由はココに有ります。
ストレッチの種類
あなたが思い浮かべるストレッチのイメージとは違う物もあります。ストレッチとはあくまで、筋肉を引っ張って伸ばす物を指します。やり方や用途も違います。
スタティックストレッチ(静的ストレッチ)
一般にストレッチと呼ばれるのがコチラです。筋肉が伸ばされた状態を数秒間キープするストレッチです。筋肉の長さを伸ばすには、静的ストレッチが最も向いています。むしろ、他のストレッチではほとんど効果が無いと言って良い程に効果の違いがあります。
特徴
①静的ストレッチは直後に筋出力(力)が弱まってしまいます。運動前はやり過ぎない様にしましょう。
②筋肉を伸ばし過ぎて、捻挫や脱臼のリスクを増やす場合もあります。
③筋肉を細胞レベルで長さを変えるのに向いている
④筋肉をリラックスさせるのは唯一静的ストレッチだけ
ダイナミックストレッチ(動的ストレッチ)
筋肉を動かす事でストレッチを行います。「力を使ったら緊張するんじゃ?」実は軽い負荷なら、血流が生まれたりセンサーが治り軟らかくなるのです。動的ストレッチの場合は、「筋肉を長くする」と言うよりも「筋肉を正しい状態にする」と言った方が良いです。
種類
①バリスティックストレッチ(動的反動ストレッチ)
動的ストレッチの要領で動かすのですが、フルレンジ(可動域の限界)付近まで勢いで伸ばします。身体のバネを鍛えるのにも向いています。しかし、反動が強い為に急にすると肉離れのリスクが高いです。学校で行うアキレス腱伸ばしは、バリスティックストレッチになります。
②ブラジルダンス
サッカーやバスケの経験者ならなじみの深いブラジルダンス。リズムに合わせて、動的ストレッチを行う事で様々な能力を養います。ウォーミングアップに最適なメニューです。余談ですが、ルーツはブラジルではなく日本と言われています。
③ムーブメントプレパレーション
動的ストレッチと筋トレが混ざった物です。コチラも総合的な能力を養えるので、ウォーミングアップや体力増進に優れています。日本ではまだ知れ渡っていませんが、アメリカとかでは当たり前のレベルに浸透しているみたいです。
特徴
①筋肉の状態を正す物なので副作用がない
②運動前に行うと筋温が高まり、動きが良くなる
③筋肉を細胞レベルで長さを伸ばすのには向いていない
PNFストレッチ(神経促通法ストレッチ)
PNFは唯一筋肉をターゲットとせずに、神経をターゲットとしています。最大可動域(伸ばせる限界)で強く力を入れます。数秒後に力を抜くと更に伸ばせる様になると言う物です。
静的ストレッチと同様に腱紡錘にアプローチしますが、2つには特徴の違いがあります。
静的ストレッチとの違い
①静的ストレッチは最低30秒必要/PNFは5秒
②静的ストレッチはリラックス/PNFは興奮する
効果の出る回数や持続時間、コツ
たくさんのストレッチの種類がありますが、1つ1つ目的や用途によってコツがあります。
静的ストレッチ
力加減・・・気持ち良い程度に伸ばす
よく「少し痛いぐらいが伸びる」と言うストレッチ専門店の人が居ますが反対です。筋肉に力を入れない様にするストレッチなのに、筋肉に力を入れる刺激を入れては逆効果です。痛い時に力みませんか?無理矢理伸ばすと揉み返しや肉離れの原因になります。
実際に良くなっている原理ですが、多少はそれでも伸びるからです。それと無理矢理伸ばされた結果、目的の筋肉ではなく他の部分が動いているだけです。効率よく気持ちよく伸ばしたい時は、伸びている実感がある程度が一番良いです。
持続時間・・・30秒以上
静的ストレッチをすると最初は筋紡錘が「脱臼するから、伸びない様に力もう」と力を入れる様にします。一定時間すると腱紡錘が「肉離れになるから、脱臼だけの方がマシ」と力を抜く様にします。この作用が大きく出るのが30秒過ぎたタイミングなのです。
もちろんそれ以下でも効果はあります。それでも最低7秒は伸ばして下さい。7秒で伸びる度合いが急激に増えるからです。
回数・・・1回
何回もやった方が良さそうですが、あまり1回目と2回目で効果は変わりません。静的ストレッチは、「どこまで伸ばしても良いのか?」「どこまで伸ばす必要があるのか?」を身体に教える作業です。1回伝えたら、そこで目的は達成しています。
動的ストレッチ
力加減・・・最低限の強さ
重りを使うなどして負荷を強めると逆効果になります。筋肉を鍛えるのではなく、筋肉を動かして緩めるのが目的です。
持続時間・・・自然な動き
筋肉を動かして緩めるのが目的ですから、ゆっくりしても、速くしても逆効果になります。普段物を取る時など、生活の動作で行う速さで動かして下さい
回数・・・20回
筋肉を動かし筋ポンプを使う事が大事になってきます。エビデンスがある訳ではありませんが、10回でアップ終了・20回で緩むと言う方が多い気がします。
※動きはなるべく大きくして下さい。大きく動かすと言う事は、よりたくさんの筋細胞に刺激が入る事になります。
PNFストレッチ
力加減・・・限界の強さ
PNFで大事なのは、筋肉が収縮しているのに骨が動かない状況です。腱紡錘を引っ張る事が目的です。PNFの手技によっては、骨を動かしますが本来動くはずの動きよりゆっくりです。
持続時間・・・5~7秒
5秒有ったら効果が期待できます。念の為に7秒すると力が入るまでのタイムラグも拾えます。長時間するのも悪くないですが、心臓に負担がかかったりシンドいのでおすすめしません。
回数・・・3回
3回もしたら筋繊維の限界まで伸ばせます。1回でも効果は大きいのですが、せっかくならより大きくして効果を最大化した方が効率が良いです。
※PNFは複雑で難しい手技です。専門書を読むだけでなく、セミナーでしっかり技術を学ぶ必要があります。
時間帯や状況のおすすめ
ストレッチするにしても、より効果をあげるシチュエーションがあります。ストレッチをする上で邪魔になるのは、交感神経の興奮・周辺組織の動きづらさ。この2つの影響を減らすには、お風呂で温まるなどしてリラックス&身体を温める事です。他にも
筋膜リリースを先にする事によって、筋肉の滑走をよくします。
寝る前に行うのも、副交感神経が優位な時間なのでおすすめです。
ツール
筋肉を伸ばす為のツールはたくさん出ています。ご自宅に置けるサイズで、ストレッチに役立つ物にはこんなにも種類や特徴があります。
ストレッチポール・ハーフカット
【ストレッチポール】
このポールの上に寝転がって、ベーシックセブンというエクササイズを行います。背骨の位置を正すのがメインの使い方なのですが、次のフォームローラーの様な使い方もします。
※【ストレッチポール】は商標登録された商品ですので、他社の物はエクササイズ用ポールとされます。
他社の物は「質が悪い」との声もありますが、用途と物を選べば問題ない場合もあります。
詳しい使い方や効果は【姿勢を良くするストレッチポールの使い方4選】
フォームローラー
【フォームローラー】
フォームローラーは筋膜リリースに用いられるポール状の物です。筋膜リリースを先に行う事で、ストレッチをよりし易くなります。詳しくは【筋膜リリース効果を上げる筋膜連鎖7ライン】をご覧ください。
バランスボール
体幹トレーニングで有名なバランスボールですが、ストレッチにも使えます。仰向けで乗っかり、腹筋のストレッチ・うつ伏せで乗っかり腰のストレッチ・横向きで寝転がって横腹のストレッチなど
ゴムチューブ
チューブトレーニングに用いられますが、ゴムの力を使いストレッチの補助にも使えます。
3Dマッサージロール・ストレッチロール
【ドクターエア】
フォームローラーに似ていますが、振動している点が違います。この振動によるメリットが素晴らしく、振動の回数分筋肉が伸び縮みするので早く解れます。また振動を負荷として、筋トレに応用もできます。正式な使い方では有りませんが、振動による刺激で骨盤矯正を行う事も可能です。
まとめ
ストレッチの細かいテクニックや原理を理解して頂けたでしょうか?この基礎となる考え方があり、それぞれのストレッチを使い分ける事で効果が上がります。「ストレッチしているのに、柔らかかくならない」そんな人は、基礎を見直してご自身の身体に合うストレッチを行う様にして下さい。
ストレッチでさらなる効果を上げたい方は、【筋膜リリース効果を上げる筋膜連鎖7ライン】からアナトミートレインや筋膜リリースを学んでください。
ストレッチ目的別コラム
【姿勢を正すストレッチ3選】
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